酒さ・酒さ様皮膚炎にモイゼルト？コレクチムと違い　顔　色素沈着

酒さ様皮膚炎（口囲皮膚炎）の原因としてステロイド外用剤やプロトピック（タクロリムス）軟膏・コレクチム軟膏が多いですが、最近、アトピー性皮膚炎治療薬のモイゼルト軟膏がなぜか、酒さ・酒さ様皮膚炎に処方され使用している方が他県から来院されます。それももともとアトピー性皮膚炎でもない方に処方されている患者さんに遭遇します。

酒さ・酒さ様皮膚炎（口囲皮膚炎）はステロイド外用剤はよくないということで、プロトピックやコレクチムを処方されたが、それでも顔の赤みが改善乏しいということで、モイゼルト軟膏に切り替えている方が増えてきました。モイゼルト使っても効果がない方が多いです（それでよくなっている方は当院にはこられないからかもしれません）。酒さがかゆいということで、モイゼルト軟膏を処方されたという方が多いですが、酒さ自体がかゆみを伴う疾患ですので、酒さの治療を優先すべきです。また、モイゼルト軟膏はPDE4阻害作用を有した外用剤です。抗炎症作用を発揮して、アトピー性皮膚炎の炎症を止めるわけですが、酒さにモイゼルトを用いられて、止めると悪化するので、また外用するといった長期使用の沼に陥って（プロトピックと似ています）、助けを求めてこられる方が増えていますが、本来の責任は処方した医師にありますので、そこでモイゼルト軟膏の止め方（中止方法）を相談して頂きたいです。

モイゼルト軟膏は酒さへの効果・効能も有しておりませんので使用してはいけない外用薬です。

モイゼルト軟膏は、アトピー性皮膚炎にしか現在は保険適応がとおっておらず、酒さ・酒さ様皮膚炎には保険適応はありません。ですので、酒さに対しての効果や副作用などは現時点では不明ですし、長期使用に伴う安全性（副作用の出現）も不明（特に顔ですし）です。そのためアトピー性皮膚炎の症状ではないのに処方されていることに医療倫理的にも驚かされます。また、本来であれば適応外使用にあたるので、保険医療機関としては問題のある処方にあたります。ただ、アトピー性皮膚炎の診断がついている方には非ステロイド外用薬として国内でもよく使われている外用薬になりますので、アトピー性皮膚炎を合併している酒さの方にアトピー性皮膚炎の皮疹にのみ、モイゼルトを使用するのではあれば問題ありません。

モイゼルト軟膏はアトピー性皮膚炎の治験の結果で、副作用として「色素沈着障害」が1.1％の頻度で報告があがっています。当院でもアトピー性皮膚炎の方に使用して色素沈着障害が生じた方を経験しています。この色素沈着障害はかゆみを伴う独特の黒ずみ、茶褐色斑、くすんだ色みを呈します。この副作用は外用薬としては問題のあるものと個人的に思っておりますが、皮膚科医の中でも話題にすらなっていません。酒さ・酒さ様皮膚炎の方にモイゼルト軟膏が使用され、酒さの赤みの上に色素沈着が生じた方もおられました。また、副作用としてざ瘡（ニキビ）（白いぶつぶつ）を生じてしまう方もおられます（毛包への悪影響は起こりうる外用になるますので、酒さにもよくないと思われます。）。当院に来院されたモイゼルトを処方された酒さの患者さんにどういう説明を受けたか質問すると、多くの答えは副作用がないから気にせずたくさん使うようにと説明をうけていますが医薬品のためそんなことはありません。モイゼルト軟膏を医薬品に分類されますので、医師しか処方できません。医薬品ですので、当然副作用があります。プロトピック、コレクチムも副作用がないと説明を受けたと訴えられる方に遭遇しますが、これらも免疫抑制作用を有した外用剤になりますので、当然ですが副作用があります。モイゼルト軟膏の市販後の副作用報告もあがっております。